IT部門に経営の知識が必要なのか? 経営部門にITの重要性の認識が必要なのか?

経営者の多くの方は「IT」について、「重要であることはわかっていても」実際に心理的には距離感を感じている、または専門家の仕事だと思っているのではないでしょうか?
そして、IT部門にとって「経営の視点」を持つことは、歴史や経験から鑑みると非常に困難であったと言わざるを得ません。

ある意図の実現のためにシステムを導入することが会社にとって有益かもしれないと思った場合、経営者はIT部門に問い合わせをするでしょう。
しかし多くの場合、IT部門と議論をしても、耳慣れない専門用語や「システム屋さん」の会話方法に邪魔されて、話が進まないのです。
まず意図が伝わらないのです。

逆にIT部門からの提案があった場合、経営者がこれに関して深い理解や確認をしようとすればするほど膨大なエネルギーを費やすことになりますし、これが必ず成功するとは限りません。

双方がこんな状態ですから、結局は中身というよりは投資効果で判定しているというのが多くの企業で起こっている現実です。

しかし経営者にとって、これではダメなのです。

細かな仕様を論じる必要はもちろんありませんが、経営判断のために「自分が必要とする」システムがどんな役割を担っているかという認識をもたなければなりません。

例えば、経営者が欲しいのはリアルタイムの経営情報や財務諸表、または非財務情報だとします。
現在は、グループ全体での意思決定を早めるために、グループ各社単体ではなくグループ全体の会計情報、経営情報を素早く分析することが必須となってきています。
この場合グループ全社の財務情報とその要素を一元管理し、非財務情報もKPI(重要業績評価指数)として統合管理する仕組みが最も効果的であり、そこにITが重要な役割を果たしているのです。

財務情報のKPIには会計基準という明確なルールがありますが、非財務情報については設定の義務もルールもなく、また環境や時期において一定ではありません。
そのため、企業(経営者)が独自に設定し続ける必要があります。
そして全体を見るには、社内部門を横断したクロスファンクショナルな情報が必要となります。
このためにはITの活用が欠かせません。
またそうしたシステムの導入には全社を挙げての取り組みが必要になってきます。

ここで言う全社とは、経営者や経営企画部門、財務部門、IT部門、そして現場ユーザーたちです。
全社を挙げての取り組みは「言うは易く行うは難し」の典型です。
更に外部ベンダーも登場するのですから「推して知るべし」です。

これらの登場者が有機的に動かない限り、「作っても使わない」、「見たかったはずのものが見れない」、という悲劇に陥ります。
原因は、「意図」が作り手に正しく伝わらなかったからです。
経営者にとってIT用語が耳慣れない専門用語であるのと同様、IT部門にとってビジネスやマネジメントの視点から繰り出される言葉は専門用語であるのです。

ITベンダーも歴史的な評価はそんなに高いわけではなく、ユーザー企業の事業や業務の理解、要件の決定や優先順位付け、等に弱いと言われているのが実情です。

プロジェクトをナビゲートする力が不足していると言われています。

「設計者=開発者」という立場ではなく、設計者はよりユーザー目線になって必要かつ現実的な設計を行い、開発者はそれを具現化していくという構造が必要なのです。

技術と人とビジネス、マネジメントについて、センスと見識を兼ね備え、判断や設計ができる人材はそうそういないとうのが実情ですが、やはり両者の視点を持った人を責任者にしてことを進めなければなりません。
社内に適切な人材が見当たらないのであれば、社外に求めてでも必要なのです。

「IT部門に経営の知識が必要なのか? 経営部門にITの重要性の認識が必要なのか?」

両方で隙間を埋める努力が必要であり、努力で補えない隙間は外部サービスを利用すれば良いのです。